1歳児の保育 ややこしない、ややこしない、ちょっと熱いだけだから

補、「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容について」

保育所保育士指針から)

 

僕らが保育をする時に、クラス全体や子ども一人一人に対して何らかの意図をもって保育することが求めらる。特に0,1,2、歳児クラスは、子ども一人ひとりに具体的な指導計画を求められる。その時、主に参考にするのが「保育所保育指針」(以下「指針」)の「第1章 総則 1保育所保育に関する基本原則 (2)保育所の目標」と「第2章 保育の内容」だ。

 

保育所の目標」

保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。

 

(ア) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。【養護】

(イ) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。【心身の健康に関する領域「健康」】

(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。【人との関わりに関する領域「人間関係」】

(エ) 生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。【身近な環境との関わりに関する領域「環境」】

(オ) 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。【言葉の獲得に関する領域「言葉」】

(カ) 様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。【感性と表現に関する領域「表現」】

 

 

保育所での保育の特徴は「養護と教育」が一体的に行われることだという。養護とは「生命の保持」と「情緒の安定」、つまり心と体を守り育てながら教育的な営みをする。僕らは「教育」というと「先生が生徒に教科を教える」みたいなことをすぐ考えるが保育所での「教育」は親が子どもに生活や人としてのあり方を伝えることと同様だ。その教育的な営みは「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の五つの領域に分けられている。 

「保育の目標」は0歳から6歳の共通の目標。乳幼児は人間の基礎を作る時。その時に生活の大半を送るのは保育所。子どもたちが人間として豊かに育っていく上で必要となる力の基礎となるもの培うために保育の中で取り組むべきもの。それを「保育の目標」として掲げている。

「保育の目標」は子どもたちの保育と同時に「保護者の支援」も目標とする。保護者支援は最近、よく強調されている。

 

保育の目標を具体的にしたものが「ねらい」。

 

「ねらい」

保育の目標をより具体化したものであり、子どもが保育所において、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、保育を通じて育みたい資質・能力を、子どもの生活する姿から捉えたものである。

 

この定義は少し難しい。具体的にどんなものか見たほうがわかりやすい。「ねらいと内容」は発達過程によって「乳児保育」「1歳以上3歳未満」「3歳以上児」の3つに分けられている。ここでは「1歳以上3歳未満」の保育に関するねらいと内容を見てみる。

 

「健康」領域で見ると

① 明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。

② 自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。

③ 健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ。

 

そして「内容」は

「内容」

「ねらい」を達成するために、子どもの生活やその状況に応じて保育士等が適切に行う事項と、保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を示したものである。

 

 

「内容」の定義の前半部分「子どもの生活やその状況に応じて保育士等が適切に行う事項」は養護に関する部分、後半部分「保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項」が教育に関わる部分。

「1歳以上3歳未満の保育に関する」「内容」を対応する「ねらい」に沿って整理すると

 

健康

 

① 明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。

・保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活をする。

・食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活のリズムが形成される。

② 自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。

・走る、跳ぶ、登る、押す、引っ張るなど全身を使う遊びを楽しむ。

③ 健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ。

・様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽

しむ。

・身の回りを清潔に保つ心地よさを感じ、その習慣が少しずつ身に付く。

・保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする。

・便器での排泄に慣れ、自分で排泄ができるようになる。

 

となる。「目標」→「ねらい」→「内容」と進むにつれ具体的になる。「目標」を具体的に説明したものを「ねらい」、「ねらい」を達成するために「内容」がある。

注意しなければならないのは、実際の保育においては、養護と教育が一体となって行われるのと同様、教育の中の5領域がばらばらにあるのではなくそれらも相互に影響しながら発達していくということ、年齢による到達点を示すものではないので、一人一人の子どもの姿をしっかりとみることは心に留めておかなければならない。

以前の保育所保育指針において「心情」「意欲」「態度」ということが強調されていたことがあった。今回の「指針」では1か所ぐらいしか見当たらないが

「指針」に記述されている子どもの心の動きはこれらを念頭に置くとより理解が深まる。

「心情」とは、自分の内側から出てくる興味・関心によって、「何?」 「えっ?」が起こり、次に「やりたい」「見たい」という「意欲」が出てきて、「やろう」と自分からはじめることが「態度」。

だから保育士はまずは子どもが「何?」「えっ?」という環境を作り、「やりたい」「見たい」という仕掛けを作って、「やろう」という気にさせる環境を作ることが仕事になる。かなり難しいけど。

 ところで「ねらい」の具体的な説明が始まる前に突然、一文が入る。

 

「健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。」

 

「育みたい力」ということだが、「目標」をより生活実態に沿った形で具体的に表現している。

 

各領域の「ねらい」と「内容」の後に保育士が注意するべきこととして「内容の取扱い」が記されている。

「 内容の取扱い」については丁寧に読めば、その通りのことが記述されている。基本は「子どもに寄り添い、その成長発達に合わせて無理させず、子ども自ら行うように支援、援助する」である。

 

以下、各領域について「ねらい」と「内容」を整理して記述する。(但し、3歳以上の内容とねらいは、「この内容」に対して「このねらい」という具合に単純化はできない。年齢を重ねればそれだけ複雑になるということだ。)

 

人間関係

人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。(目標)

 

他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う。(育みたい力)

 

ねらい内容

  • 保育所での生活を楽しみ、身近な人と関わる心地よさを感じる。

・保育士等や周囲の子ども等との安定した関係の中で、共に過ごす心地よさを感じる。

・保育士等の受容的・応答的な関わりの中で、欲求を適切に満たし、安定感をもって過ごす。

 

② 周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする。

・身の回りに様々な人がいることに気付き、徐々に他の子どもと関わりをもって遊ぶ。

・保育士等の仲立ちにより、他の子どもとの関わり方を少しずつ身につける。

 

保育所の生活の仕方に慣れ、きまりの大切さに気付く。

保育所の生活の仕方に慣れ、きまりがあることや、その大切さに気付く。

・生活や遊びの中で、年長児や保育士等の真似をしたり、ごっこ遊びを楽しんだりする。

 

環境

生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。(目標)

 

周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。(育みたい力)

 

ねらい内容

① 身近な環境に親しみ、触れ合う中で、様々なものに興味や関心をもつ。

・安全で活動しやすい環境での探索活動等を通して、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の働きを豊かにする。

・玩具、絵本、遊具などに興味をもち、それらを使った遊びを楽しむ。

 

② 様々なものに関わる中で、発見を楽しんだり、考えたりしようとする。

・身の回りの物に触れる中で、形、色、大きさ、量などの物の性質や仕組みに気付く。

・自分の物と人の物の区別や、場所的感覚など、環境を捉える感覚が育つ。

 

③ 見る、聞く、触るなどの経験を通して、感覚の働きを豊かにする。

・身近な生き物に気付き、親しみをもつ。

・近隣の生活や季節の行事などに興味や関心をもつ。

 

言葉

生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。(目標)

 

経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。(育みたい力)

 

ねらい内容

① 言葉遊びや言葉で表現する楽しさを感じる。

・保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする。

・生活に必要な簡単な言葉に気付き、聞き分ける。

 

② 人の言葉や話などを聞き、自分でも思ったことを伝えようとする。

・親しみをもって日常の挨拶に応じる。

・絵本や紙芝居を楽しみ、簡単な言葉を繰り返したり、模倣をしたりして遊ぶ。

 

③ 絵本や物語等に親しむとともに、言葉のやり取りを通じて身近な人と気持ちを通わせる。

・保育士等とごっこ遊びをする中で、言葉のやり取りを楽しむ。

・保育士等を仲立ちとして、生活や遊びの中で友達との言葉のやり取りを楽しむ。

・保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもって、聞いたり、話したりする。

 

表現

様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。(目標)

 

感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。(育みたい力)

 

ねらい内容

① 身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。

・水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。

・音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ。

 

② 感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。

・生活の中で様々な音、形、色、手触り、動き、味、香りなどに気付いたり、感じたりして楽しむ。

・歌を歌ったり、簡単な手遊びや全身を使う遊びを楽しんだりする。

 

③ 生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。

・保育士等からの話や、生活や遊びの中での出来事を通して、イメージを豊かにする。

・生活や遊びの中で、興味のあることや経験したことなどを自分なりに表現する。