2歳児の保育「三つ子の魂デシデシドン14」

14,学びて時にこれを習う、また、よろこばしからずや

ある日の昼休み、モコさんが2歳児室にきて唐突に

「たまだ君、今度の研修の時、指針についてやりたいからさ、資料、作ってきて。もし時間欲しいなら私、保育に入るからさ。」

保育所保育指針ですか?それはペーペーの保育士じゃなくて主任さんの仕事でしょう。」

「私もいろいろ忙しいのよ。それに若い人にやってもらったほうがいいのよ。」

「どこが若いんですか。僕、おっさんですよ。」

「保育歴がよ。私みたいに酢いも甘いもわかるようになると細かいところを見逃してしまうのよ。たまだ君だったら、いろいろ疑問もあると思うし、その辺をほんとに若い人の気持ちになって書いてもらえるような気がする。それに指針書いている人、たぶんおじさん、おばさんばかりだからたまだ君のほうが文章も理解できると思う。」

「はぁ、どんな感じがいいんですかね。」

「ズバリ、わからんところはわからないと言っていいから解説してあげて。」

「解説ですか、うーん、それはなかなか難しい。」

「何書いてんだよーって言ってもいいから。それにたまだ君、結構あんたにゃ、貸してるよね。」

「えーっ、そこまで借りてないと思いますけど。まぁ、モコさんの頼みだったらとりあえずやってみますけど。あと見せますから、直してくださいね。」

「ありがとうー。助かるわ。代わってほしい時言ってね。」

モコさんはそう言い残すと行ってしまった。

 

ルーシーが

「確かにあれは難しい。」

と言えば リーちゃんは

「学校で読まされたぐらいかな。」

と言う。まぁそんなもんだ。憲法だっていつから読んでないだろう。憲法ほどではないが日常生活で「指針」に目を通すことはない。ただ、その道の専門家が書いてあるのだから、いいことも書いてあるんだろう。そういうわけで研修向けの「指針」についての資料を僕が作ることになった。後日、出来上がってからモコさんに見せに行ったが、「大丈夫、大丈夫、」と言って見もしなかった。リーちゃん、ルーシーにそのことを言ったら二人とも「大丈夫、大丈夫。」他人事だと思って適当だなと思い、不安を感じつつ、研修をすることになってしまった。

保育所保育指針

第1章 総則

ア 保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。

 

用語について

「子どもの最善の利益を考慮」とは子どもに関することが決められ、行われる時は、『その子どもにとって最もよいことは何か』を第一に考えるということ。

保護者を含む大人の利益が子どもの利益よりも優先されないように、子どもの人権を尊重することの重要性を表している。

児童福祉法では第1条に

「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、

適切に養育されること

その生活を保障されること、

愛され、保護されること、

その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られること

その他の福祉を等しく保障される権利を有する。

と定められた。

 

因みに国連で採択され日本の児童福祉に最も影響のある「子どもの権利条約」には4つの原則として

・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

・差別の禁止(差別のないこと)

をあげている。

 

「福祉」とは「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福社会的援助を提供するという理念を表す。

 

「健全な心身の発達」と言う語についてはそのままとれば何の問題もないように思えるが、以前よりこの言葉で傷つく人がたくさんいたし、今もいる。僕の知人の障害者は「何が健全だ、健全ってなんだ」と憤っていた。さらに「発達」という言葉に対しても「発達しなきゃ人間じゃないのか」という人もいた。子どもが発達することは素晴らしい。うれしいことでもある。でもそうでなくても子どもは、人はいとおしいし、尊厳を尊重されるべきものだと思う。一概にその言葉自体を否定するというわけではないが子どもたちの「命」と「心」を育む保育所ならば十分にこういうところも配慮して欲しい。

 

まとめれば保育所についての一般論なのだが

保育所は子どもが成長と発達を遂げる場である。保育所においては子どもにとって何が最も良いことなのかを最優先で考えられ、社会の中で家庭とともに子どもの幸せを得るのに、最も良い生活の場所でなければならない。」

となる。

 

 

保育所は、その目的を達成するために、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。

 

「保育に関する専門性を有する職員」

子どものためにも保育所として最も大切なもの。保育士、栄養士が一般的であるが他に看護師や調理員も配置されているところがある。「ただ子どもを預かっているだけではない。専門的に見ている。」と言うことだがそれだったら待遇を・・・と言いたくなるところでもある。

 

「発達過程」と言う言葉に込められた意味は、ある年齢や月齢で何かが「できる、できない」と いったことで発達を見ようとする捉え方ではなく、それぞれの子どもの育ちゆく過程の全体を大切にしようとする考え方を反映している。子どもの発達はゆっくりであったり、行きつ戻りつであったりして決して決まりきった道をたどるものではない。標準的な物差しに当てはめるのではなく子ども一人ひとりの過去から今につながる成長の軌跡を踏まえることが大切なことになる。

 

「環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。」

まず「環境を通して」だが具体的な「環境」と言うのは大まかに言えば「人」「もの」「場所」などが考えられる。人から話しかけられたり、興味深いおもちゃだったり、周りの自然の色だったり、音だったり様々な刺激を受ける。その刺激に反応して、おもちゃで遊んだり、自然に近寄ったり、自ら働きかけることを繰り返しながら、好奇心であったり、意欲であったり、さらには主体性を身につけていく。このことが「環境を通して(行う保育)」ということになる。

 保育所保育の対比として学校教育を考えると学校は「教室で教科書を使って」という部分が大きい。そういう意味で「環境を通して行う」ということは保育所保育の特性といえる。

 

「養護」とは子どもたちの生命を保持し、その情緒の安定を図るための保育士等による細やかな配慮の下での援助や関わりの総称である。

「生命の保持」とは「快適に生活をする。」「健康で安全に過ごせる」「生理的欲求が十分に満たされる。」「健康増進が積極的に図られる。」こと。

「情緒の安定」とは「安定感を持って過ごせる」「自分の気持ちを安心して表すことができる。」「周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれるようにする」「くつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする」こと

「教育」とは、「子どもが現在をもっともよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎」という「生きる知恵」を子どもが得るための保育士等による援助である。

 

つまり「環境を通して、養護及び教育を一体的に行うことを特性としている。」というのは 「保育所の人、もの、場所の中で生活することを通して、保育士等が子どもを一人の人間として尊重し、その命を守り、情緒の安定を図ることによって子どもは保育士等、ひいては人間への信頼を獲得し、その安定した気持ちの中で、生きる知恵を身につけられるような経験を得る。そのような営みを特性としている。」ということ。

 

まとめれば

保育所は保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図るという目的を達成するため、保育士や栄養士などの専門的な職員が、家庭とコミュニケーションをとりながら、子どもの今の状況や成長の軌跡を踏まえ保育所の人、もの、場所の中で生活することを通して、子どもを一人の人間として尊重し、その命を守り、情緒の安定を図ることによって子どもは保育士等、ひいては人間への信頼を獲得し、その安定した気持ちの中で、生きる知恵を身につけられるような経験を得る。そのような営みを特性としている。」

 

 

 

保育所は、入所する子どもを保育するとともに、家庭や地域の様々な社会資源との連携を図りながら、入所する子どもの保護者に対する支援及び地域の子育て家庭に対する支援等を行う役割を担うものである。

 

「社会資源」とは、利用者がニーズを充足した り、問題解決するために活用される各種の 制度・施設・機関・設備・資金・物質・法律・情報・集団・個人の有する知識や技術等を総称していう。

 

都会を中心に親との別居による核家族化やご近所付き合いの減少による子育て家庭の孤立化が進んでいる。保育所子育て支援の役割がますます重要になってきている。

 

保育所は入所する子どもの保護者や地域の子育て家庭の支援を行う。」

 

 

保育所における保育士は、児童福祉法第18条の4の規定を踏まえ、保育所の役割及び機能が適切に発揮されるように、倫理観に裏付けられた専門的知識、技術及び判断をもって、子どもを保育するとともに、子どもの保護者に対する保育に関する指導を行うものであり、その職責を遂行するための専門性の向上に絶えず努めなければならない。

 

児童福祉法第 18 条の4」は保育士について「保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」となっている。保育指針全体が「支援」「援助」という言葉であふれかえっているのにここだけ「指導」となっているのは児童福祉法第18条で「指導」となっているから。若い保育士が多くいる現場で「指導」はなかなか難しい。児童福祉法を変えてしまえばいいのにと思うがどうなんだろう。

 

「保育士の倫理観」としては児童福祉法子どもの権利条約書かれている子どもに対する尊厳を最大限尊重することが求められる。

児童福祉法第1条

「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」

子どもの権利条約には4つの原則として

・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

・差別の禁止(差別のないこと)

 

「専門的知識、技術及び判断」とある。「知識」「技術」を身につけることは方法の蓄積はあると思うが「判断」を身につけるのはそれらに比べればさらに経験が必要になる。人から教わるというより「自ら」「自分で」「主体的に」身につけることになるからだ。園長、主任、各リーダーに「若いもんを育てる」という意識も必要になる。

 

専門的知識、技術とは

  • 子どもの発達をよく知る
  • 生活面、つまり日常生活習慣技術
  • 環境構成
  • 遊び
  • 人間関係構築
  • 保護者への相談援助

 

これらを身につけるのは大変だ。だがちょっとの研修で身につくわけでもない。時間的な余裕があるわけでもない。研修は導入に過ぎない。日ごろから同僚に教わるとか、まねるとかする必要がある。お互いそれらのことについて話をするとしっかりと身についてくる。また、それらの知識、技術を使って子どもが楽しんだり、できなかったことができたりして喜んでくれることも多々あり、そんなときはますますやる気になる。

 

 

(2) 保育の目標

保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。

 

(ア) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。

 

(イ) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。

 

(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。

(

エ) 生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。

 

(オ) 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようと するなど、言葉の豊かさを養うこと。

 

(カ) 様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。

 

「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力」という文は少しわかりづらい。「今日も明日も幸せに生きるために身につけるもの」と言うことになると思う。

そのために(ア)~(カ)の「養護」「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」という5つの目標を掲げている。

「養護」については上述したが、子どもたちが物事を身につけるには心と体が安らかである必要がある。

僕たちは現場の人間なので抽象的なことよりは具体的なことのほうがわかりやすい。第1章の「総則」で「保育の目標」が掲げられたあと、第2章「保育の内容」でさらに具体的に「ねらいと内容」が示されている。「保育の内容」は「乳児保育」「1歳以上3歳未満児」「3歳以上児」に分けられているので一番、範囲の広い「3歳以上児」の項を見ながら「保育の目標」を見直してみる。

 

 まず「ねらい」を記述し、それに対応する「内容」を記述する。

「ねらい」は「保育の目標」をより具体化し、わかりやすくしたもの

「内容」は、「ねらい」を達成するために、「養護」については保育士等が適切に行う事項、他の「目標」については保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を示したものである。

「健康」を例にとると「目標」は

「健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。」

「育みたい力」は

「健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。」

 

「目標」を具体的に表した「ねらい」は

① 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。

② 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。

③ 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。

 

「ねらい」を達成するための「内容」は

「① 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。」ために

・保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。

 

「② 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。」ために

・いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。

・進んで戸外で遊ぶ。

・様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。

 

「③ 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。」ために

・保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。

・健康な生活のリズムを身に付ける。

・身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄 などの生活に必要な活動を自分でする。 

保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。

・自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。

 

ということになる。

 

※健康

健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。(目標)

 

健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。 (育みたい力)

 

明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。(ねらい)

・保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。(内容)

 

自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。

・いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。

・進んで戸外で遊ぶ。

・様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。

 

健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。

・保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。

・健康な生活のリズムを身に付ける。

・身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄 などの生活に必要な活動を自分でする。 

保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。

・自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。

・危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。

 

※「人間関係」

人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。

 

他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う。

 

保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。

  • 保育士等や友達と共に過ごすことの喜びを味わう。

・ 自分で考え、自分で行動する。

・ 自分でできることは自分でする。

・ いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。

 

身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。

・ 友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合う。

・ 自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。

・ 友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。

・ 友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。

 

社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。

・ よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。

・ 友達との関わりを深め、思いやりをもつ。

・ 友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする。

・ 共同の遊具や用具を大切にし、皆で使う。

・ 高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。

 

※「環境」

生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。

 

周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。 

 

身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ。

・ 自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。

・ 生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ。

・ 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。

 

身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れ ようとする。

・ 自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。

・ 身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。

・ 日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。

・ 身近な物を大切にする。

・ 身近な物や遊具に興味をもって関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考えたり、試したりして工夫して遊ぶ。

 

身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。

・ 日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。

・ 日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。

・ 生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。

保育所内外の行事において国旗に親しむ。

 

※「言葉」

生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようと するなど、言葉の豊かさを養うこと。

 

経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。

 

自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。

・ 保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。

・ したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。

・ したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。

 

人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。

・ 人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。

・ 生活の中で必要な言葉が分かり、使う。

 

日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、保育士等や友達と心を通わせる。 

・ 親しみをもって日常の挨拶をする。

・ 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。

・ いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。

・ 絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像をする楽しさを味わう。

  • 日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。

 

※「表現」

様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。

 

感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする。 

 

いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。

・ 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして 楽しむ。

・ 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。

 

感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。

・ 様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。

・ 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。

・ いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。

 

生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。

・ 音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。

・ かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。

・ 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。

 

「内容」はかなり具体的に子どもたちに経験させたいことなどが書いてある。僕たちはそれらを参考に保育の計画を立てていくが、その目的は「ねらい」や「目標」だということを頭の隅に置いておくと、またいろいろと工夫ができると思う。

 

 

保育所は、入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、保育所の特性や保育士等の専門性を生かして、その援助に当たらなければならない。

 

「その」という指示代名詞になれない人は「保護者」に置き換えれば多少はわかりやすくなる。「援助に当たる」ことが「目標」に読めるが、援助をしたのち、保護者との関係が豊かになり、子どもにとってよりよい育ちに結び付くことまでの意味を含む。

 

(3)保育の方法

保育の目標を達成するために、保育士等は、次の事項に留意して保育しなければならない。

 

・僕らの考える「方法」というのは、結構具体的で、電気をつける方法は「スイッチを入れる。」だし、花壇を作る方法は「土を耕し草花を植える」だ。それよりはもう少し、大きく抽象的ではある。

・(1)保育の役割の「ア」の目的を達成するための「方法」が「イ」になっている。

ア 保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。

 

イ 保育所は、その目的を達成するために、保育に関する専門性を有する職員が、家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行う。

 

・太字の部分を具体的に示したものが(3)保育の方法になっている。

「家庭との緊密な連携の下に、子どもの状況」を踏まえ

ア 一人一人の子どもの状況や家庭及び地域社会での生活の実態を把握するとともに、子どもが 安心感と信頼感をもって活動できるよう、子どもの主体としての思いや願いを受け止めること。

イ 子どもの生活のリズムを大切にし、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境や、自己を十分に発揮できる環境を整えること。

 

「発達過程」を踏まえ

ウ 子どもの発達について理解し、一人一人の発達過程に応じて保育すること。その際、子ども の個人差に十分配慮すること。

 

保育所における環境」を通して

エ 子ども相互の関係づくりや互いに尊重する心を大切にし、集団における活動を効果あるものにするよう援助すること。

 

オ 子どもが自発的・意欲的に関われるような環境を構成し、子どもの主体的な活動や子ども相互の関わりを大切にすること。特に、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように、生活や遊びを通して総合的に保育すること。

 

子育て支援について「目標」と「方法」の記述があまり違わないのはどうしたもんだろうか。

 

「目標」

保育所は、入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、保育所の特性や保育士等の専門性を生かして、その援助に当たらなければならない。

 

「方法」

カ 一人一人の保護者の状況やその意向を理解、受容し、それぞれの親子関係や家庭生活等に配慮しながら、様々な機会をとらえ、適切に援助すること。

 

(4)保育の環境

保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然や社会の事象などがある。保育所は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない。

 

・「保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行う。」ことは保育所保育の特性でありその点についてさらに詳しく記されている。

 

ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配慮すること。

・人的環境としては「子ども」「保育士」をはじめ「栄養士」「調理員」「技師」「看護師」「保育補助員」などの職員がいる。子どもたちは基本的に自分たちから人に関わろうとするので、対する大人は笑顔でやさしく接するようにすることが大切だ。そうすれば子どもはまた関わろうとするし、関わりの中で学ぶことも多いだろう。更には保護者や、地域の人たち、学生など、幅広く子どもたちと関りを持ってもらうような働きかけが必要になる。また子どもたちも異年齢での活動やクラス分けをすることで同年齢の友だちに偏りがちな人間関係に幅を持たせることができる。

 物的環境としては遊具や施設ななどがあるが、遊具においては子どもたちの発達に合った遊具を自由に使えることが大切に思える。自由に使えてこそ、工夫が生まれる。施設面では子どもの使いやすさが大切だ。ロッカーや流し、トイレなど子どもの大きさにあったものであればこそ意欲的に活動しようと思う。

 場など空間的な環境としては遊びのコーナー、お着換えや諸々の準備のコーナー、食事スペースなどを用意し、子どもが自分で主体的に生活を進めて行けるようにする。またその場では人との関わりも出てくるので空間の環境整備はより大切になってくる。

 

イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や 安全の確保などに努めること。

・子どもたちが「あそこあぶないからちかづかんとこ。」とか「あんまりきれいじゃないから行かんとこ」とかいうことのないようにする。

 

ウ 保育室は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、生き生きと活動できる場となるように配慮すること。

・遊びたいときに遊べる場所やちょっと休みたいときに休める場所や視覚的に癒される色合いや、触って心地よいものなどがあったりすると、メリハリが感じられ、生活にリズムが出てくる。なによりも、ここに自分はいていいんだと思えるような雰囲気が大切に思える。

 

エ 子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整えること。

・例えば遊びのコーナーを設ける、異年齢クラス、異年齢活動や選択できる活動を行うことで、同年齢の子どもや異年齢の子ども、他クラスの担任とかかわることができる。

 

(5)保育所の社会的責任

保育所は、子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行わなければならない。

保育所は、地域社会との交流や連携を図り、保護者や地域社会に、当該保育所が行う保育の 内容を適切に説明するよう努めなければならない。

保育所は、入所する子ども等の個人情報を適切に取り扱うとともに、保護者の苦情などに対し、その解決を図るよう努めなければならない。

 

・地域で一番身近な「準公的」な福祉施設としてのルール。

ア 「人権の尊重」

イ 「地域交流」「情報公開」

ウ 「守秘義務」「苦情解決」

 

「第1章総則 1,保育所の基本原則」だけを見ていったが、「自主、自ら、自分、主体的、自発的、意欲的」といった言葉が並ぶように「指針」はいかに主体的、自発的、意欲的な子どもを育てるかということが課題の中心になっている。子どもはというか人間は本来主体的なものだと思う。子どもが主体的にふるまったときに、大人はそのまま待てるのか、見守れるのか。その一方で子どもが生まれながらにして人間としてのふるまいを身につけているわけではない。一人ひとりの子どもに対してそれぞれに適切なところで大人が援助できるのか。更には大人自身も主体的な人生を歩んでいるのか。主体的な考えや行動を子どもが身につけることは、大人自身の課題でもある。子どもと共に生きることで、関わることで、大人も子どもとともに育っていく必要がある。

 そして、人と関わるときの大原則は言うまでもなく、相手の尊厳を尊重することだ。「尊厳を尊重」と言われると何か難しく感じる。でもその入り口は、人の悪口を言わない、とか自分がされて嫌なことは人にはしないとかの割と日常的なモラルを忘れないことだと思う。

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たまだくん、おつかれ!つづき、やろうね。」

終わった後、モコさんが声を掛けてくれた。

「またやるんすか?」

金曜の夜、7時から8時まで。この時間に座学のみの研修は厳しい。

「あたりまえでしょ、まだ途中じゃない。」

 結局半分もできなかった。

「そうすけど、モコさん、寝てたでしょ。」

僕の隣にいたのに思いっきり、船をこいでいた。

「何言ってるの、たまだくんの研修、寝るわけないでしょ。」

モコさんは断固として言った。図々しいにもほどがあるが、そうでなければ「講師」の横で居眠りなどできない。

「やりますけど、少人数で昼にやるとか、みんなの負担にならないように考えてくださいね。」

「アイアイサー!」

モコさんは僕に敬礼をして言った。「アイアイサー?」小さいころに聞いたような・・・。

 

「指針」の研修は難しい。そもそも「指針」自体簡単ではない。さほど多くない量のものにたくさんのことが入っている。それは「解説書」の厚みを見ればわかる。座学のみの研修は退屈だ。しかし「指針」は「読む」ところから始まるのでどうしても最初は座学になってしまう。素晴らしいことが書いてあるし、保育士だけではなく子育て家庭の保護者にも十分に役立つので、みんなが理解できればよいのだが。その方法も「指針」にのっけていただければと思う。